北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

館明日香 Tachi Asuka

カロリンスカ医科大学 客員研究員


スウェーデンのカロリンスカ医科大学で客員研究員として研究に励まれている館明日香さんにお話を伺いました。


スウェーデンではどのような研究をされていますか?

基礎分野では放射線及び周産期脳障害に対する治療法についての研究を、疫学分野では周産期が児の発達に及ぼす長期的な影響についての研究を行っています。


現在の研究分野に興味を持ったきっかけを教えてください。

産婦人科医として周産期脳障害(脳性まひ)は非常に身近な病態であり、脳障害という研究テーマに取り組みたいと思っていました。また当初より周産期という一生のうちで極めて限定的な期間が赤ちゃんとお母さんに長期的にどんな影響があるのかとても興味がありました。日本ではやっと周産期-新生児科の統一したデータベースを立ち上げる段階のため、ビッグデータを用いて周産期の長期的な疫学研究のできる北欧を選びました。


現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

大学時代に初めて自分のお金で海外旅行した先がスウェーデンでした。カロリンスカでポスドクだった友人を訪ね、ミーティングに出席し、さっぱり内容が分からないにも関わらず漠然と「いつかここで研究したい」と思いました。そして小さいころからPippiが大好きだったのでJunibackenに連れて行ってもらい、「いつか子どもと一緒に来たい」と思いました。
最終的には、留学するにあたり家族皆で楽しく暮らせそうという理由で決めました。

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夫婦で女王陛下より奨学金を授与されました。(出典:スウェーデン王室ホームページ)


研究を行う上での一番の課題を教えて下さい。

家族皆が楽しく暮らせること、それに尽きます。私はここでの研究もそれ以外の生活もとても楽しいです。子どもたちもそれぞれ学校でたくさん友達ができて毎日楽しんでいます。ただし私のわがままについてきてくれた主人は、、、同じラボで研究をやってはいますが、臨床畑一本の人なので物足りなさもあったようです。そんな彼もやっと現場に出られることになり、正直ほっとしています。
海外で生活するにあたり家族全員が明確な目的を持っている方が珍しいと思うので、きっとこの課題はどのご家庭にも少なからずあるのかなと思います。


日本と比べて、スウェーデンの研究環境について、どのような印象をおもちですか?

日本では日勤帯で臨床を、終わってから研究をしていたのと週1-2回の当直もあり、家族とゆっくり過ごす時間はあまりありませんでした。スウェーデンでは臨床はやっていませんが、やりたかった研究ができるだけでなく家族ととても豊かな時間を過ごすことができています。それは家族の協力はもちろん、ボスを始めとしたラボの仲間たちの理解とサポートなくしては成しえません。
スウェーデンは、私にとってやりたい事と家族との時間のどちらも持つことができる最高の環境です。


最後に、これからスウェーデンで研究を始めようと考えている研究者にメッセージをお願いします。

ここでの生活を振り返った時、お互いにとって良い時間だったと思えるように過ごしていきましょう。


(2020年7月)
略歴

2009年 名古屋大学医学部医学科卒業

2009年−2011年 豊橋市民病院 初期研修医

2011年− 2013年 同上 産婦人科 医員

2013年−2016年 小牧市民病院 産婦人科 医員

2016年−2019年 名古屋大学産婦人科 医員

2019年− カロリンスカ医科大学 客員研究員/名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 研究生

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