北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

重松 尚 Hisashi Shigematsu

ヴィータウタス・マグヌス大学 Vytautas Magnus University

提携准教授  Partnership Associate Professor


現在、リトアニアではどんな研究をされていますか?

1930年代から第二次世界大戦期のリトアニアの歴史について研究しています。また、合わせて、現代リトアニアにおける歴史記憶の問題にも取り組んでいます。


現在の研究分野に興味をもったきっかけを教えてください。

学部時代にリトアニアに交換留学した際、身近な体験からリトアニアのナショナリズムの問題に関心をもちました。そのときの関心がその後の研究に影響を与えているように感じます。その後何度かリトアニアに留学しましたが、留学するたびにこの国に対する関心が深まっていきました。


リトアニアにある現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

私が現在所属しているヴィータウタス・マグヌス大学は、1989年に在米リトアニア人たちの尽力により再建された大学で、リトアニア国内のほかの研究機関と比較して学際性が強いのが特徴です。私は、歴史学はもちろん、政治学や社会学にも関わるテーマに取り組んでいるため、さまざまなアプローチから取り組める所属機関としてこの大学を選びました。



日本と比べて、リトアニアの研究環境について、どのような印象をお持ちですか?

リトアニアに渡航する直前まで日本の国立大学で助教を務めていましたが、そのときは個人研究室などを与えられていて、また職員さんもとても丁寧で、非常に恵まれた環境にいました。他方で、リトアニアの歴史などを研究をするにはリトアニアの文書館にアクセスする必要があったため、毎年リトアニアに出張しなければなりませんでした。また、追加の史料調査が必要になった場合は、次の出張まで待たないといけませんでした。今はリトアニアに住んでいて、文書館や国立図書館などの機関にいつでも訪問できるようになったので、とても助かっています。こちらの受入研究者の先生からは、希望すれば学内で個人研究室として使えるスペースも探すとおっしゃっていただいていますが、大学から離れた別の街にある文書館や図書館で研究をすることがほとんどなので、今のところ学内での研究スペースは必要としていません。


リトアニアでの生活はいかがですか?日本での生活と比べて暮らしやすいと感じること、逆に苦労していることなどあればぜひ教えてください。

こちらは、多様な価値観を互いに認め合う雰囲気が日本よりも強いと感じています。日本にいるときは同調圧力などを感じて息苦しく思うこともありましたが、こちらの生活ではそういったことはまったくなく、とても過ごしやすいです。日本と比べてジェンダーギャップが少ないのも、こちらのほうが暮らしやすいと感じる理由の一つです。街中には緑も多く、また街並みの古くて美しいので、歩いているだけでとてもリラックスできるのもよいです。また、私は動物倫理や環境問題などの観点からヴィーガンを実践しているのですが、ヴィーガンの食材が日本よりもはるかに多く、外食する際もほとんどのレストランでヴィーガンやグルテンフリーのメニューなどが用意されているので、とても助かっています。そうした点でも多様性が認められていて、さまざまなバックグラウンドをもった人たちが同じテーブルで食事できるという点でも、暮らしやすさを感じています。逆にこちらの生活で苦労していることは何一つありません。


最後に、リトアニアで研究を行いたいと考えている研究者にメッセージをお願いします。

私はリトアニアを研究対象としているため、必然的にリトアニアの研究機関を所属先として選ぶこととなりましたが、そうではない分野を研究されている方にとって、リトアニアの研究機関の環境が相応しいかどうか、私には判断できないところがあります。他方で、生活環境としてのリトアニアについてであれば、何かアドバイスができることがあるかと思います。もしリトアニアで研究を行いたいと考えていらっしゃる方で、何かご質問などございましたら、いつでもご相談ください。

(2024年7月)

略歴

2009年 国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業

2012年 東京大学大学院総合文化研究科博士前期課程修了

2013年–2014年 ヴィルニュス大学東洋学センター 助教

2015年–2017年 日本学術振興会 特別研究員-DC

2022年 東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了 博士(学術)取得

2019年–2023年 東京大学大学院総合文化研究科 助教

2023年–現在 日本学術振興会 特別研究員-CPD

2023年–現在 明治学院大学国際学部付属研究所 研究員

2024年–現在 ヴィータウタス・マグヌス大学政治科学外交学部 提携准教授