北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

金子信人 Kaneko Nobuto

NORCE(Norwegian Research Centre AS) 研究所 ポスドク研究員


2016年からNORCE研究所でポスドク研究員としてノルウェーに滞在している金子信人さんをご紹介します。


現在、ノルウェーではどんな研究をされていますか?

私はサケ類の成長がどのようなメカニズムにより制御されているかを研究しています。現在は、魚の血液中にある、ストレス下で誘導され成長の停滞を起こすホルモンに着目し、これをバイオマーカーとして使えないか検討しています。


現在の研究分野に興味を持ったきっかけを教えてください。

もともとは魚の生態(回遊行動や種内・種間関係など)に興味がありましたが、それらのトリガーや調節には身体の中で起こる生理的な反応が重要であると考えたのがきっかけです。


現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

現在の研究所の上司とは修士時代からよく共同研究や人員の交流を行ってきました。その過程で、現所属機関では日本より大規模かつ多様な飼育実験が行われていることを知り、これらのサンプルが利用可能だと言っていただけたためです。


以前、JSPSの特別研究員(DC2/PD)として北海道大学に勤務されていましたが、特別研究員としての経験はノルウェーでの研究の役に立っていますか?

現在の研究は、DC2時に確立した測定法が軸になっています。また、DC2では現研究室との共同研究が行われておりました。当時はノルウェーでポスドク研究員をするつもりはありませんでしたが、御縁が続き、連続的かつ発展的な研究ができています。


日本と比べて、ノルウェーの研究環境について、どのような印象をお持ちですか?

ノルウェーは国策として養殖魚の生産量増大を試みているため、水産業や関連研究に対する予算規模と人材・設備の多様さに感銘を受けました。結果として、水産業は学生にとって非常に魅力的な就職先であるようです。研究を含めた水産業全体が活力を持ち、上手く循環している印象です。その一方で、限られた中でも優れた研究成果を発する日本人研究者の凄さも感じています。


最後に、これからノルウェーで研究を始めようと考えている研究者にメッセージをお願いします。

ノルウェーは治安もよく、気候も(ベルゲンは曇りか雨で)安定しており、ライフワークバランスも良く、さらには水産研究者に対する需要が高いといった多くの利点があります。また、ノルウェーだけでなく他国に住んで研究するというのは、短期の研究滞在よりさらに環境適応能力や生活能力が鍛えられると思います。1年暮らすと不便な点も目につくようになりますが、それを楽しむ姿勢が大切だと思います。


(2020年2月)
略歴

2012年 北海道大学水産学部海洋生物科学科卒業

2014年 北海道大学大学院水産科学研究院海洋応用生命科学専攻修士課程修了

2017年 北海道大学大学院水産科学研究院海洋応用生命科学専攻博士課程修了 博士(水産科学)取得

2016-2018年 北海道大学大学院水産科学研究院(JSPS 特別研究員DC2/PD)

2016年- NORCE研究所(Norwegian Research Centre AS)ポスドク研究員(JSPS 特定国派遣研究者)